3歳と6歳のふたりの
子どもをお風呂に入れるのは、
私の担当だ。
父親としていち日のメイン業務と
いってもいい。
その業務は、ひと言でいえば、
時間との闘い。
夕食を食べてから寝るまでの
最後の大仕事だ。
毎日、まず自分ひとりでお風呂に入り、
頭と体を洗う。ひと息つく暇もなく、
まず長男をを順番に呼ぶ。
体と頭を洗ってあげて、
湯ぶねにつからせる。
そしたら、次は次男の番だ。
次男を呼んで同様に洗う。
二人が湯ぶねに
つかったところで、ひと段落。
お風呂用のおもちゃで遊ぶ
二人の子どもを横目で見ながら、
私は先にお風呂を出る。
バスタオルで急いで体をふき、
ドライヤーで髪を乾かす。
これで自分のお風呂は終了。
次は子どもの番。
ここから、またひと仕事。
子どもたちはお風呂の
おもちゃで遊んでいて、
なかなかお風呂を出たがらない。
可哀そうだが、容赦なく
お風呂から出していく。
まず長男を呼ぶ。
バスタオルで体をふき、
ドライヤーで髪を乾かす。
「いっていいよ」
長男をお風呂から
妻の待つリビングへ送る。
そして次男の番。
バスタオルで体をふき、
ドライヤーで髪を乾かす。
先ほどと同様だ。
やっと終わり、私もリビングに行き
服を着させてもらう子どもたちを横目に、
冷たい水を口に含む。
毎日、毎日、繰り返す。
スピードが重要だ。特に冬。
ゆっくりしていると、
誰かが風邪を引くはめになる。
それにしても、
いったい私は、何回同じことを
繰り返しているのだろう?
ふと気になって、計算してみたら、
ざっと3,000回だった。
次男が7歳までお風呂に
入れてあげるとすると、
あと1,000回繰り返す。
4,000回。とてつもない数字だ。
かつて自分の趣味で
4,000回繰り返したものはあっただろうか。
1年に数回、自分ひとりで
お風呂に入る機会があると、
「お風呂ってこんなに
くつろげるものだったんだ」
と、しみじみと実感する。
あと、1,000回も
私は繰り返さなければいけないのだ。
さて、ある日のこと。
夏休みが終わったときだ。
長男は小学校、
次男は幼稚園に再び通い出す。
途端に、自宅は、
妻と私しかいない静かな空間に。
なんだか寂しい気持ちになる。
夏休み中は、あんなに騒がしく、
静かな空間を求めていたのに。
子育てもそういうものかな。
手が離れてしまうと、
繰り返してきたことが終わってしまった
寂しさにおそわれるのかな。
子どもが家に帰ってきた。
夕食後、私は今日も子どもを
お風呂に入れる時間だ。
「おいで」
今日のお風呂タイムがスタートした。
あと、1,000回しか繰り返せない
至福のひとときだ。
コメント