コロナになり、テレワークになってから
会社に行くことがなくなった。
家を出て電車にのって会社に行く。
そんな当たり前の出来事がなくなったのだ。
代わりに朝起きて、朝ごはんを食べたら
そのまま家で仕事をする。
その環境の変化が大きく、
しばらく気が付かなかったのだが、
最近あることに気が付いた。
「いってらっしゃい」と誰からも
全く言われていないことだ。
それはそうだ。
私はどこにも出かけていない。
むしろ学校や幼稚園に行く子どもたちに
こちらが「いってらっしゃい」と
言っている。
2階にある私の仕事部屋。
パソコンと仕事用の書類しかない、
4畳半の小さな部屋だ。
まずは、その部屋で
昨日の終業後に来てメールの確認など
ちょっとした仕事を終える。
パソコンの時計を見ると、
朝8時になっている。
長男が学校に行く時間だ。
1階に降りていくと、
長男が慌ただしくランドセルを
背負って玄関に向かう。
「いってらっしゃい」と
声をかけて見送る。
私はまた2階に上がる。
その30分後、今度は次男が
幼稚園に行く時間だ。
また1階に降りて
「ばいばい」と見送る。
次男は「また遊ぼうね」と手を振る。
妻と次男は幼稚園へと向かう。
それが日課だ。
私は誰にも
「いってらっしゃい」と言われない。
「おかえり」も一緒。
会議などで手が離せないときを除いて、
なるべく小学校、幼稚園から
家に帰ってくる子どもたちに
「おかえり」とだけ言いに
1階に降りる。
私が言うだけで言われない。
特に不満があるわけではない。
ただ、子どもと見る
テレビのアニメの世界では
スーツを着て会社に出かけるお父さんが
まだ一般的だ。
たいていの場合、玄関で
家族がお父さんに向かって
「いってらっしゃい」と
言っている。
まさに平和な家庭のひとコマだ。
アニメと現実のギャップは
子どもの目には
どう映っているのだろうかと、
不思議に思う。
さて、今日は朝から仕事が立て込んでいる。
残念ながら、息子たちを
見送る時間がなさそうだ。
代わりにと、朝ごはんを食べている
子どもたちを見に1階にちょっと降りた。
子どもたちはパンをかじっている。
そんな様子をちょっと眺めたあと、
「あんまりゆっくり食べていると、
遅刻するよ」と言って、
すぐに2階に上がろうとした。
そのとき、
「仕事行ってくるね」
なんとなく言ってみた。
「いってらっしゃい」と長男。
「ばいばい」と次男。
あ、こういう形もいいな。
いってらっしゃいの新しい形だ。
2階へと出社する父親と、
それを見送る子どもたち。
今日も一日がんばれる気がし、
パソコンの前に座った。
短パンとTシャツ姿で。
コメント