「奇跡ですね」
私の子どもが2人とも対外受精だというと、
そう言われることがある。
最初の子どもが流産したとき、
落ち込んでいる妻に見られないように、
布団にくるまって泣いた。
子どもを作ろうと二人で話しあい、
それから間もなく妊娠。
なんの問題もなく子どもを
授かると思っていた矢先の出来事だった。
すでに妻は30代後半、高齢出産になる。
次こそはと臨んだが、
なかなか授かることはなかった。
二人とも検査は受けたが問題なかった。
時間ばかりが経過し焦ってくる。
そんな中、妻の希望もあって
対外受精を選択した。
後で知ったのだが、30代後半だと、
成功率は約3割程度。
個人差があり、何度トライしても
授からない場合があるらしい。
幸いのことに2つの受精卵が誕生した。
そのうちの1つが選ばれ、
長男が誕生することになる。
安定期を迎えたとき、
出産のとき、
初めて抱き上げたとき、
今でも喜びが蘇ってくる。
選ばれなかったもう1つの受精卵は、
まだ産むかどうかは決めていなかったが、
冷凍保存することにした。
3年が経ち、無事、次男が生まれてきた。
科学的に、確率的に、
これが奇跡かはわからない。
ただ、健康に6歳と3歳になった
2人の子どもを見ていると、
特に冷凍保存されても、
私の遺伝子をしっかり引き継いで
私そっくりの顔の次男を見ていると、
確かに奇跡のように感じる。
長男と次男は3歳が離れているが、
同じ時期に誕生したのだ。
次男は母親のおなかの中を含めて
約3年間眠っていたことになる。
3年間、いったい何の夢を
見ていたのだろう。
次男が寝ている姿を見ていると、
そんな物思いにふけるときがある。
外で遊び疲れたときのように、
まったく何の夢も
見ていなかったかもしれない。
私たちがお兄ちゃんの世話をしたり、
一緒に遊んだりしている光景を見ながら
早く外に出たいと
思っていたのかもしれない。
そんな反動からか、次男の朝は早い。
子どもを持つ親なら誰しもそうだろうが、
子どもが寝ている間が自分の時間だ。
私は朝5時に早起きして、
自分の時間をつくるのが日課だが、
「さて、これから」というときに、
次男が目をこすりながら
ひょっこり現れる。
興奮したときに止まらないのも反動か。
大きな声をはりあげ、
私と妻が怒っても大声を出し続ける。
かと思ったら、テレビで覚えたのか、
ずっと踊りを踊っているときもある。
ずっと眠っていたんだもんね。
退屈だったんだよね。
ときおり、次男を見ていると
愛らしくてたまらないときがある。
無言でぎゅっと抱きしめる。
「ぼくはおもちゃじゃないぞー」
どこで覚えたかわからない
達者な言葉を発しながら、
私の手元ではしゃいでいる。
知ってるよ。命宿る人間だもんね。
待たせてごめん、
この世の中で、いっぱい
新しいこと、楽しいことを
一緒に体験をしていこう。
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