DtoCマーケティングで最も重要なKPI。それはLTV(顧客生涯価値)です。ひとりのお客様がいくらお金を落としていただけるかという値です。この値が不明確だと、事業をするうえで支障が出てきます。例えば新規のお客様を獲得するのにいくらかけていいか、継続施策にいくらかけていいのか、お客様が何人いれば売上はいくらになるのか。すべてがわかりません。それなのに、LTVをないがしろする企業の多いこと。なぜか。実は定義付け難しいからです。
LTVの一般的な定義とは
LTVの一般的な定義を解説すると以下になります。
・顧客ひとりが離反するまでに購入する売上金額×限界利益率
その名のごとく、顧客生涯価値なので、1年ではなく初めて購入してから全く購入しなくなるまでの金額をみます。また売上ではなく利益でみます。
上記を細分化していくと以下になります。
・顧客ひとりあたりの1年間の購入額×継続期間年数×限界利益率
・購入単価/回×購買頻度/年×継続期間年数×限界利益率
なお、それぞれの変数は、すべて平均値になります。
LTV策定を阻む3つのボトルネック
さて、上記が本来の計算式なのですが、実際にデータを取得する際にいくつかボトルネックが存在し、会社や事業部によってその定義がまちまちになってしまします。その主だったボトルネックは以下になります。
1.限界利益率という言葉がなじみがない。
2.継続期間年数が抽出できない。
3.4月~3月のような会社の期に売上を当てはめられない。
限界利益率という言葉がなじみがない
仕事をしていれば当たり前の値かもしれませんが、実際、会社によって、その値を知る人は例えばPL責任者など一部の人という場合があります。商品ごとに原価率が異なり、自分の担当範囲に適用するにはそぐわないというケースもあります。そのため、LTV=売上にしようという場合が多々あります。
継続期間年数が抽出できない
まず迷うのは顧客になったタイミング。会員になったときか、初回購入した時点か迷います。そして、離反したタイミングでまた迷います。買うのをやめた顧客は一生、購入しないとも限りません。6か月買わなくても、7か月後に買うこともありますし、3年後に買う可能性もあります。
上記のタイミングは商品特性によりますので、主体的にデータなどを見ながら決めていくしかありません。例えば一般消費材の場合、会員になった人が即時購入しているのであれば、会員になった時点を起点にしても問題ないでしょう。また。一般消費財であれば、離反のタイミングはだいたい1年でみておけばいいと思います。つまり、1年間、1つの商品も購入しなかったら、その方は離反したとみなし、その終点までの購入金額を合計した値がLTVです。
4月~3月のような会社の期に売上を当てはめられない
例えば年度始まりが4月の会社があるとします。4月時点で一度でも購入したことがある顧客が1万にいました。初回購入から定義づけした期間内での売上LTVが1万円だったとします。この場合は、3月までの売上は1万×1万円で1億になるのでしょうか?
残念ながらなりません。なぜなら、1万人の顧客が4月時点が初回購入ではないからです。定義付けした期間が例えば2年の場合、4月時点で23か月目の顧客もいます。その場合、あと1か月分しかお金を落としてくれません。なので、精緻にしようとすると、既存顧客を継続期間別に分解して、それぞれ今期にいくら売上が見込めるかを計算しないといけないのです。結構面倒ですよね。
そのため、会社によっては、その面倒を回避するために、顧客ひとりひとりの継続期間を無視したLTVを策定します。どういうことかというと、まず過去1年間で1回でも購入したことがある、すべての顧客をまるっと抽出し、過去1年分の売上を合計します。そのうえで、顧客人数で割った値をLTVとします。すべての顧客の中には、新規の顧客もいれば、ずっと継続している顧客もいるので、いわゆるLTVではありません。しかし、売上を試算するのは楽です。新規顧客と継続顧客の比率が極端に変わらない限り、顧客人数×上記LTVという計算をすれば1回で済ませることができるのです。
目的に応じて定義を決めて明文化
このように、データ抽出の手間、利便性などを鑑みて、各所でLTVの定義が異なってくるのです。ですが、それは間違っていることはありませんし、ないよりはマシです。本来のLTVが抽出できないからといって、放置するのはやめましょう。ただし、業務上は事足りる独自のLTVを策定できたとして、その定義が曖昧なままだと、他部署へ説明したときに混乱が発生するでしょう。ぜひ定義を明文化して関連各所への共有を進めていきましょう。
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