お風呂上りのある晩、
4歳の息子がカードゲームを
やろうと言ってきた。
カードを見ると、
表面は統一の黒の絵柄で、
裏面は寿司の絵が描かれている。
「かっぱ巻き」なら2枚、
「まぐろ」なら2枚。
なるほど、神経衰弱か。
息子がダイニングテーブルの上に、
カードを並べる。
神経衰弱は記憶力のゲーム。
息子はまだ幼稚園児なので、
あまり得意ではない。
どうやって勝たせてあげようかと、
思案しながらゲームは始まった。
が、それは普通の神経衰弱ではなかった。
世にも奇妙なルールの
カードゲームだったのだ。
まずは普通に2枚めくる
私から机に並んだカードの中から
2枚を選んだめくる。
一番最初から揃うわけがない。
「たまご」と「えび」だ。
再びカードをひっくり返す。
次は息子の番、
「まぐろ」と「サーモン」。
同様に揃わない。
一巡目が普通に終了した。
揃うまでめくる
私の番。「いなり」と「コーン」。
息子の番。「たこ」と「かんぱち」。
私の番。「いか」と「ほたて」。
ここまでは普通だった。
次は息子の番。一枚目は「えび」だ。
『さっきあったはず、あそこかな』
しかし息子がめくった次の一枚は
残念ながら「いくら」だった。
そこから奇妙なルールが始まった。
「えび」があるまで息子は
何度もカードをめくり出した。
当然ルール違反だ。
そこまでして勝ちたいか。
仕方がないので何も言わず、
「えび」が出るまで
めくらせてあげた。
揃ったら相手のもの
息子が何度もカードをめくると、
お目当ての「えび」が出てきた。
これで「えび」が揃った。
ルール違反だが、息子のものだ。
しかし、ここで思いがけない
行動を息子が取る。
揃った「えび」の2枚を
「はい、これは父さんの」と
私に渡してきたのだ。
不思議な行動に私も困惑しつつ、
ゲームを続ける。
私の番。一枚目は「かんぱち」だ。
次にめくったカードは
違うカードだったが、
郷に入っては郷に従え、
息子の行動を真似して「かんぱち」が
出るまで何度もめくる。
「かんぱち」が出たが、
「これボクのね」と息子が取る。
自分が揃えたカードを
相手に渡すという、
なんて友好的なゲームだろう。
最後は山分け
こうして、二人で順番に
2枚ずつカードを取っていった。
理屈的には双方同じ枚数に
なっているはずだが、
終始、他にも奇妙なルールが登場したため、
なぜか息子の手持ちのカードの方が
ちょっと多い。
まあ、でも目論見どおり、
息子に勝たせてあげたからいいか。
だが、最後も奇妙なルールが発動。
息子は私と自分のカードを合わせると、
また机の上に並べ始めた。
そして、半分にわけて、
一緒に枚数を数え始めた。
私が18枚、息子も18枚。
半分に分けたから当たり前だ。
しかし、「引き分けだね」と
息子はにこにこしている。
息子が考案した不思議なカードゲームは、
とても平和なゲームでした。
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