DtoCマーケティングに従事していると、売上が順調に伸びてきたのに、最近、伸び悩んできた。何か新しいことを始めなきゃ、と思うときありますよね。ただ、ちょっと待ってください。逆に「やめる」ことで売上や利益を伸ばす方法があるんです。その3大秘技を今回はご紹介します。ただし、「やめる」ということはすでにやっていることが前提となりますので、心当たりない場合は読み飛ばしてください。
さて、順番に3つをご紹介していきます。
普通の宅配便で商品を送るのをやめる
お客様への商品発送は、ヤマト運輸や佐川急便などの物流会社に依頼していることがほとんどだと思います。その際、60サイズや80サイズと呼ばれる、普通の宅配便で発送することが当たり前だと思っていませんか?
実はサイズや重さの制限がありますが、ネコポスと呼ばれるような、小さい荷物専用の配送方法があります。普通の宅配便よりも値段が安く、かなりの変動費削減につながります。「そんなこと当たり前だ」と思うかもしれませんが、先入観やオペレーションの都合で実はできていない企業も多く、DVDを買ったら中身がすかすかの段ボールで送られたきた、ということが実際ありました。
購入する商品のサイズやその組み合わせで柔軟に普通の宅配便か否かを使いわけるAmazonはさすがです。物流センターで働く方に、その便で配送するかを自動的に指示しなければいけませんので、注文から配送指示までのデータ処理によほどの工夫をしているのでしょう。
また、そもそも論になりますが、ネコポスに収まるように商品を開発している企業もあります。もちろん、機能やデザインを無視してサイズに合わせた商品を作るのは本末転倒になってしまいますが、ぎりぎり収まるようであれば、絶対に収まるサイズで作った方が安上がりです。
どれだけコストにインパクトがあるかシミュレーションしたいと思います。実際の単価は企業ごとに物流会社と契約することになりますので、ここではあくまで想定で試算します。1件あたりネコポス便が350円、宅配便が600円とします。そうすると、年間の配送件数が1万件のときは250万円、5万件のときは1250万円、10万件のときは2500万円もコストカットできることになります。コスト=利益なので、まるまる利益増につながることになります。
メルマガやDMの一斉送信をやめる
メルマガやDMは一斉送信するものだという固定概念はないでしょうか。もちろん複数回にわけると手間もかかるし、契約によっては1件あたりの単価も増えてしまいます。しかし、ケースによっては、その手間やコストをかけても複数回にわけて送信した方が儲かるケースがあります。そのケースというのは、受注側のリソースが足りない場合です。リソースとは、メルマガの場合は、主にサイトが許容できるセッション量、DMの場合は主にコールセンターの受電量(お客様から同時に電話を受けられる量)になります。
つまり、折角お客様にメルマガやDMを送って興味を持ってもらったのに、サイトに行ってもつながらない、電話もかけてもつながらない、という機会損失が起こっているケースになります。ここ、意外と盲点なのでぜひ確かめてみてください。実際、それなりの企業でも見落としていたことがよく見受けられます。
例えば毎月1回、お客様に会報誌をお届けしている通販企業があり、会員数が増えたので会報誌の送付数も増えたのに、思ったほど売上が上がらないと悩んでいました。調べてみると、コールセンターのキャパが超えていて、受電率が下がっていました。早速、会報誌を送付するタイミングを会員番号の下一桁が偶数か奇数かで2回に分けて発送したところ、簡単に売上があがりました。
オンラインがメインのEC企業でも、同じようなケースがあります。人気の商品が販売開始したので、そのタイミングでSNSやメルマガで一斉にお知らせしたところ、サイトの許容範囲を超えるセッションが発生し、お客様は誰も買えない状態になってしまいました。この場合は、告知自体のタイミングをわけるのももちろんですが、サーバーを増強する、サイトへの入場制限をかけられるロードバランサーを導入する、などの打ち手も考えられます。
新しい施策を次々と行うのは良いことですが、それを受けるインフラ側の負荷も併せて考えるようにしたいところです。
クレジットカード決済の3Dセキュアをやめる
最後はEC企業であまりない実施している企業は少ないと思いますが、クレジットカードの3Dセキュアです。3Dセキュアとは、クレジットカードの番号を入力した際、さらに、カード会社のページに遷移し、そこで事前に設定しておいた、カード会社側の認証を行うという仕組みになります。目的としてはカードの不正利用防止になります。
しかし、これがお客様にとっては非常に面倒な仕組みです。例えばVISAカードであれば、V-passというカードのホームページで事前にオンライン会員の登録が必要になります。あまりデジタルが得意ではない方は、その方法が難しいと思います。さらに、ECに導入しているシステムや決済代行者によっては利用できるカードの種類も限定されます。私自身、普段は某サイトでいつも利用するカードが使えなくて、購入を断念した経験があります。
つまり、3Dセキュアを導入することで、カードの不正利用自体は防げますが、購入が阻害され、CVRが下がってしまうのです。私の経験上は約70%は下がってしまいます。ちなみにAmazonが3Dセキュアを導入していないのは言わずもがなです。昨今、カードの不正利用防止強化により、3Dセキュアの導入を検討されている企業も多いと思いますが、ぜひその辺、留意してください。代替案としては、不正利用を検知するツールや不正利用された際を保証する保険などありますので、そちらも併せて検討してみてください。
なお、3Dセキュアも進化しており、最近は3Dセキュア2と呼ばれる、アルゴリズムによって不正利用ではないかと判断したお客様のみに3Dセキュアの入力を求めるバージョンが登場しました。こちらでどこまでCVRの減少を抑えられるかは今後ウォッチしていきたいと思います。
まとめ
以上。「やめる」だけで利益を上げる3大秘技でした。あくまで代表的な3つを紹介しただけなので、他にも「やめる」べきことはあるかと思います。敵は「固定概念」です。「前からやっていた」「良かれと思った」と思考を停止せず、普段の業務を見直してみるのはいかがでしょうか。
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