スタジオジブリの有名な作品である
『魔女の宅急便』という映画が好きで、
子どもの頃、何度も見た。
その映画で印象深いシーンがある。
急遽、旅立つことになった
主人公のキキ。確か13歳だったはずだ。
その娘であるキキをお父さんが
久しぶりに抱っこしてひと言。
「重たくなったなあ」。
成長した我が子を実感する
そんなシーンだが、
当然子どもの頃見たときは
さして感動は覚えなかった。
ただ、なぜか胸に残った。
さて、自分も父親になって、
7歳の長男と4歳の次男がいる。
次男は怒られたり、
足をぶつけたり悲しいことがあると、
すぐに「だっこ」と
私に飛びついてきて、だっこをねだる。
「よしよし」と声をかけながら
抱きかかえ、しばらくだっこしてあげる。
一方で7歳の長男は
もうだっこをねだることはない。
幼稚園まではよくだっこしてたのにな。
もう恰好悪くなったのか、
次男に遠慮しているのだろうか。
ところが、先日、階段でふざけていたのか、
あごを強打し、大声で泣きだした。
とっさに私の元にきて、だっこをねだる。
私はすぐに抱き上げたのだが、
普段は次男の重さになれているので、
まずその重さに驚いた。
次男と違って手足が長い分、
うまくだっこもできない。
可哀そうだが、数秒で
長男をおろしてしまった。
いつの間に、こんなに
大きくなったのだろう。
散歩をするときや
一緒に遊んでいるときは
そんなに感じなかった、
我が子の成長を実感した。
『魔女の宅急便』のあのシーンが
頭の中でフラッシュバックする。
長男が生まれたのは、
確か平日の夜だったと思う。
私は仕事を終えて病院に駆け付けた。
看護師さんに教えられた部屋に向かうと、
妻が小さな子どもを抱いていた。
しばらくその様子を見守っていたが、
妻が察して声をかけてきた。
「抱いてみる?」
私はごくりと唾を飲んだ。
「そっとね」
首のすわっていない我が子を
万が一でも落とさないように
慎重に慎重に抱きかかえる。
事前に研修で習ったように
左腕で首を支え、
右腕で体をかかえる。
「なんて温かいのだろう」
その小さな生き物は
私の胸にくるまって、
小刻みに息をしていた。
ああ、あの日は
遠い昔のことのようだ。
長男をだっこできるのも
あと数年だろう。そして次男もだ。
あっという間に大きくなるだろう。
その次男は昨日から
風邪を引いている。
咳をして鼻水も出ている。
私が「大丈夫?」と聞くと
首を横に振りながら
「だっこ」と答える。
風邪がうつるかもなと思いつつも、
次男が「もういいよ」というまで
体を揺らしながらだっこし続けた。
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