お父さんの熱いお風呂

パパの育児

小学校低学年くらいまでだったと思う。
お風呂は母親と入っていた。
たまに父親とも入ったが、そのときは
すごく嫌だった記憶がある。
理由はあまり覚えていない。

しかし、自分が父親になったとき
その理由をはっきりと思い出した。
お風呂の温度だ。
とにかく熱かったのだ。

特に冬。年寄りは
やっぱりお風呂は
熱い温度で入りたい。
だが、子どもには熱すぎるのだ。

実際、子どもは、
私が湯船につかったあと、
お風呂に入ってくるのだが、
手で湯加減を確かめて
「熱くて入れない」と言う。
すぐにシャワーの水で
冷ましてあげる。
その間、子どもは
待ちぼうけをくらうはめになる。

そしてそれが何度も続くと
仕舞には「お母さんと入りたい」
と言われてしまうのだ。

もちろん、私が年寄りで
お風呂は熱いくらいが丁度いい、
ということもある。
しかし、言い訳がある。
二人の子どもをお風呂に入れるのが、
私の日課だ。
まずは自分だけで入り、
長男と次男を順番に入れていく。
だいたい30分はかかる作業だ。
最初から温いと、
自分がお風呂を出る頃には
体感では水に近くなってしまう。
夏はいいが、冬の寒い時期は
風邪を引きそうになるのだ。

だからちょっと熱めにお風呂を
沸かすのだが、子どもには
そんな理屈は通用しない。
ただ熱いから熱いというわけだ。
それは間違っていない。
昨日も今日も
一緒にお風呂に入るのを
拒否され続ける私。
ああ、子どもの頃もこうして
父親を傷つけてしまったのだろう。

仕方がない。今日は温度を温くしよう。
お風呂の温度をパネルで調節。
いつもより2度ほど下げておく。
お風呂が沸き、まずは自分ひとりで入る。
むむっ。
お風呂というより温水プールのようだ。
なんだが落ち着かない。
そんなに長くは入っていられないので、
すぐに子どもを呼ぶ。
まずは4歳の次男からだ。

次男の髪と体を洗ってあげて、
シャワーで流す。
「入っていいよ」
しかし、お風呂を見た次男は
湯船に入ろうとしない。
「熱くないよ」と言っても
湯船に入ろうとしない。
おかしいな? 何が嫌なのだろう?
「なんで入らないの?」と聞いてみる。
すると、次男は
「あれがいやだ」
と湯船に浮かぶ
私の髪の毛を指さした。

なるほど……。
嫌だったのは熱さだけではなかったのだ。
風呂おけで髪の毛を丁寧にすくう。
何度も何度も。
お風呂の表面がきれいになるまで。
お風呂おけに浮かぶ髪の毛を見ながら、
子どもの頃の父親に自分の姿を
重ねるのだった。

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